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以前、HD650用のケーブルとして「MUGEN-HPC540M(Mはモディファイの意味)」を制作したのだが、このケーブルは解像度はER4SR(標準ケーブル)に肉薄するものの、音色がいまいちで仕事用としては使えないので再度作り直すことにした。 識別のため「MUGEN-HPC579M(Mはモディファイの意味)」と名称を付けた。「MUGEN-HPC540M」とは、魔法を掛けて音質を上げている点は同じだが、魔法の掛け方、言い方を変えれば高音質化処理の仕方が違う。あとは見ればわかるけどベースのケーブルが違う。今回はオヤイデのHPC-23TN V2をベースにしている。(「MUGEN-HPC540M」ではオヤイデのHPC-26T V2をベースにした) MUGEN-HPC579M ベースケーブルはHPC-23TN V2。見た目はHPC-26T V2より遥かにイイ。見た目は100万円/mと100円/mのケーブルかってくらいの違いがある。いわゆる「魅せケーブル」なのだが、透明ジャケットを使っている関係上シールドが安定性重視の編組になっていて音質的にはHPC-26T V2よりもややスペックダウンしている。 MUGEN-HPC579Mの音 さて、その音。まだエージング途中だが、ER4SR(標準ケーブル)を基準に比べると解像度はER4SR(標準ケーブル)の+8段程上。情報量に優れていてER4SR(標準ケーブル)では潰れて拾えない音が拾える。ER4SR(標準ケーブル)はHD650(標準ケーブル)の+76段程上の解像度と言う評価だったので「MUGEN-HPC579M(Mはモディファイの意味)」は+84段程上乗せできるケーブルと言うところ。ただ私が予想したほど伸びてない。それでもER4SR(標準ケーブル)は超えてきてるわけだからヘッドホンの音質差を簡単にひっくり返すのがケーブルの良いところではある。さすがにER4SRとHD650の音質差をひっくり返すのは簡単じゃないけど。 また「MUGEN-HPC540M(Mはモディファイの意味)」で不満だった音色についてもかなり改善している(これを改善するためにわざわざ作り直したんだから当たり前だけど)。音痩せや薄さは全く感じない。雰囲気や情感の表現に優れていてER4SR(標準ケーブル)と比べるとER4SR(標準ケーブル)はかなり味気ない音に感じてしまう。 また、歪感も小さく、ER4SR(標準ケーブル)が歪っぽくてガチャガチャ煩く感じるほどスムーズで滑らかな音が出る。歪感も小さくボリュームを上げても不快にならないのでついついボリュームを上げたくなってしまうような音だ。これはまずいw 奥行きは+12m程。「MUGEN-HPC540M」は+11mと言う評価だったので一応上がってはいるが劇的な差ではない。完成前は奥行きはもっと上がると思っていたのだが、編組シールドが思った以上に足を引っ張っているのかも。とは言ってもER4SR(標準ケーブル)は奥行き+7m程なので「HD650+MUGEN-HPC579M」で奥行きもER4SR(標準ケーブル)を超えることができるのは間違いないのだが。 このケーブルの良いところはこれくらいで、問題点としてはもやっとした濁りが僅かにのって、音像のイメージングがぼやけ気味になる。また静寂感が良くないと言う点だろうか。これのせいでクリアネスではER4SR(標準ケーブル)に僅かに劣ってしまっている。とは言っても、もやっとした濁りもHD650本体由来かケーブル由来か判断に困るレベルなので単体で聴けば気にならないかもしれない。だが「MUGEN-HPC540M」との比較からベースに使ったHPC-23TN V2の問題と判断した。HPC-23TN V2は表面形状が複雑な編組シールドで中心導体も49本でストランドが多いからだ。この問題点は買う前からスペックで分かってはいたのだが、編組シールドの影響を低く見積もり過ぎていた。それにこのケーブルに掛けてある高音質化処理にはかなり自信があったので、『ベースケーブルのスペックが多少劣っていたとしても、前作の「MUGEN-HPC540M」は簡単に超えられるだろう』と言う驕りがあった。 実際作ってみて確かに「MUGEN-HPC540M」以上にハイレベルなものは出来たのだが、出来が良いがゆえにこのケーブルが編組シールドでなかったらもっと良くなるんじゃないか?と言う気持ちにかられてしまう。またイメージングが良くないのも編組シールドが原因じゃないだろうか?要はどこか納得できない部分があるということ。 恐らくだがベースにHPC-26T V2を使えば、音像がもっとビシッと決まってクリアネスでもER4SR(標準ケーブル)と同等か上回るくらいにできると思う。 20190430_追記 エポキシの完全硬化が進んできたのか、上記の時より音が良くなってきた。エージングの途中であまり評価するものじゃないなと思いながらも、文章書くのが苦手で書きたくなったときに書かないと筆が進まないから書くけど。解像度はER4SR(標準ケーブル)の+10段程上。解像度で「MUGEN-HPC579M(Mはモディファイの意味)」は+86段程上乗せできるケーブルと言うところだろうか。 あと、上ではクリアネスはER4SR(標準ケーブル)より若干劣ると評価したが、クリアネスでも上回るようになった。ER4SR(標準ケーブル)はやや硬め、HD650(MUGEN-HPC579M)はやや柔らかめの傾向なのだが、HD650(MUGEN-HPC579M)は柔らかめなのにER4SR(標準ケーブル)よりも音が澄んでいて細部まで見渡せる感じ。ER4SR(標準ケーブル)は音は硬めでクッキリなのだが音が濁り気味で細部が潰れ気味に聴こえてしまう。あくまでHD650(MUGEN-HPC579M)と比べてだけど。 だけど「音像のイメージングがぼやけ気味になる」「静寂感が良くない」と言う問題は若干改善しているが残ったままなので、これはやっぱりベースケーブルの問題と言う認識は変わっていない。現状ではイメージングはER4SR(標準ケーブル)の方が若干良いかな。静寂感はER4SR(標準ケーブル)よりも良いと思うのだが、音質が完璧に近づけば近づくほど僅かな欠点がものすごく気になるってやつで(だからこそ音質を追及するのは難しいのだが)、やはり気になってしまう。 まぁ、でも市販のケーブルでこれだけの音が出せれば上出来だろう。今の私の実力なら当然だけど。HPC-23TN V2で追求できる音質の限界近くまで引き出していると思う。 20190502_追記 さらにエージングが進んできてさらに音が良くなってきた。正直ER4SR(標準ケーブル)が上回っている点を探すのが難しい。特に中高音域ではHD650(MUGEN-HPC579M)の方が明らかに上回っている。圧倒してるとは言えないけど上回ているのは間違いない。軽やかでさわやか、柔らかく軽やかなのにつまらないと言う感じがなく、音楽性が高い。軽やかとか軽快とか言うと音が薄いとイメージしがちだが、軽やかなのに音が薄いと言う印象が全くなく密度が高い音。比べると薄く感じるのはER4SRの方。 そして音の純度が高く音が澄んでいる(シャープだとかクリアーということではなく濁りが少ないという意味)。これはER4SR(標準ケーブル)が明らかに濁って聴こえるレベル。さらに(低音域を除く)中高域においてはシャープネスとクリアネスでもER4SR(標準ケーブル)を上回る。 軽やかで密度が高く、シャープなのに柔らかい。矛盾しているように感じるかもしれないが、これは濁りを抑えて音色の汚れが減少した結果。表面的な音のキャラクターを変えたのではなく、表現力を高めて本質的に音質を引き上げたと言うこと。ER4SRのレビューでは、HD650(標準ケーブル)と比べて音色は中低音域はER4SR(標準ケーブル)の方が良く、高域はHD650(標準ケーブル)の方が良いと言う評価だったけど、HD650(MUGEN-HPC579M)だと全体的な音色や表現力ではER4SR(標準ケーブル)をはっきり上回るようになっている。低域の締まりは若干劣るけど。 また上で「(低音域を除く)」とか「低域の締まりは若干劣るけど」とかエクスキューズを付けたのは低音の締まりはER4SR(標準ケーブル)ほど良くないと感じたから。このおかげで低音域が少しもやっとして、女性ボーカルのソプラノだと定位がビシッと決まってイメージングがはっきりするのに、野太い男性ボーカルだと定位がぼやけてイメージングが若干はっきりしないと言う感じになる。このあたりは微妙すぎてケーブルのせいかHD650本体のせいか判断できない。たぶん両方問題あるんだろうけど、低音のもや付きに関してはより線から単線に交換したらER4SR(標準ケーブル)と互角レベルに持っていけそうな差なので、この感じならベースのケーブルをHPC-23TN V2(0.089mm×49本より線)からHPC-26T V2(0.16mm×7本準単線)に交換したらER4SR(標準ケーブル)に匹敵するくらい締まった音が出せるのではないだろうか?尤もER4SRのケーブルを交換したらまた引き離されるだろうけどw 解像度はER4SR(標準ケーブル)の+15段程上。と言うことは解像度では+91段程上乗せできるケーブルと言うところだろうか。奥行きは+12m程なのではじめの評価とあまり変わっていないようだ。それでも当初予想していたよりも良い音になっている。ER4SRのレビューの時はER4SR(標準ケーブル)の音があまりにもよかったので、ちょっと控えめに「『MUGEN-HPC540M』を改良すればER4SR(標準ケーブル)と互角くらいに持っていけるかも」と言ったのだが、「MUGEN-HPC579M」を制作する際はER4SR(標準ケーブル)を若干上回るよう「MUGEN-PWC013M(解像度+79段、奥行き+15m)」くらいのレベルを目指して制作したし、大体これくらいだろうと考えていた。実際完成してみると解像度や音色は「MUGEN-HPC540M」や「MUGEN-PWC013M」を凌駕していた。奥行きは「MUGEN-PWC013M」よりちょっと劣っているけどそこまで気にならないかな。このレベルのケーブルになると解像度や定位より表現力のほうが大事になってくるので、音色が良く表現力が高い「MUGEN-HPC579M」は市販のケーブルを手直しして作ったケーブルとしては最高傑作だと言える。だけどこのケーブルで聴くと「ベースケーブルを「MUGEN-HPC540M」と同じHPC-26T V2にしたほうが音が良かったかな。」と言う考えが頭をよぎってしまう。 20190527_追記 エージングが進んで慣らしも済んだので再評価。完成直後は音の良さに感動して過剰に評価してるかもしれないが、慣れてきたのでもう一度評価。 基本的に解像度や奥行きに関しては評価は変わっていない。ER4SR(標準ケーブル)と比べて今でも高いと感じる。しかし音色や音楽的な表現力に関してはやや過剰評価だったと思う。と言うのは慣れで感動が薄くなってしまったから。私は良い音の条件としては「良いね!良いね!良いね!」と感動が持続しないといけないと思っている。のだが、「MUGEN-HPC579M」ではその感動が持続しない感じ。ER4SR(標準ケーブル)と比べると音楽的表現力に優っていることは優っているのだが、「この程度の差しかないの?」という感覚に陥ってしまう。ER4SR(標準ケーブル)がかなり優秀だと言うのもあるんだろうけど。とは言っても比較でなく単体で聴いた時の印象が大事なのだが、単体で聴いてもどこか納得のいかない感じが残る。ER4SR(標準ケーブル)からHD650(MUGEN-HPC579M)に変えると、変えた瞬間音場がグワーと広がるのだが、反面音が遠く、エネルギー感が若干不足していると感じる。ただし音が遠いからエネルギー感が不足しているのではなく、他に原因があることが多い。音が遠くてもエネルギー感は出るからだ。この場合、イメージングが良くなく、音像をクッキリと描写しないのが原因だと思う。不満の原因はおそらくここだろう。HD650自体もこういった悪癖を持っているのだが、「MUGEN-HPC579M」のベースケーブルの悪癖も多分に出ていると思う。 このあたりが克服できればそんな不満は無くなると思う。 たぶんHPC-26T V2で作り直すことになりそうだけど、忙しいのでしばらく先になりそう。そもそもこのケーブルは製品用の部品の音質チェックに使うために作ったもの。現状では使用に耐えるレベルには達しているし、すでにHD650用のケーブルにかれこれ半年くらい使っている。ケーブル自体はストレートに作れば1週間程度で作れるものなのだが。ベースが他人が設計したものなので、どうしても手を入れられる余地が少なくなってしまうし、これ以上時間をかけても劇的に音質を上げるようなことはできないだろう。
2019/04/24 執筆
2019/04/30 加筆
2019/05/02 加筆
2019/05/27 加筆
2019/07/18 公開
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